母からもらったスキレット

更新日 2022年1月20日

シーズニング理論 油脂編

スキレットのシーズニング方法を突き詰めていくと「どの油がいいの?」という疑問に悩まされます。 オリーブオイルを推奨しているブログや動画も見受けられますが、化学的に考えるとオリーブオイルはシーズニングに適していません。

誤った情報を鵜?みにして、あなたが無駄な手間と時間を浪費しないように、ちゃんとした根拠をもとに「向いている油」と「向いていない油」の違いを解説していきます。

このページでは理系オタクの私が化学的な理論を分かりやすく説明し、実践で得られた成功例と失敗例をまとめたものを紹介しています。 できるだけ平易な言葉でお話しますが高校生が習う化学の内容になります。

ニガテな方もいるかもしれませんが分かりにくいところは読み飛ばして、あなたにとって必要な部分だけでもシーズニングに役立ててください。 どこにも劣らない情報を提供します。

スキレットに限らず、鉄のフライパンや中華鍋、ステーキ皿などのシーズニングには適した油があります。 具体的には…

【シーズニングに適した油】
グレープシードオイル、大豆油

【シーズニングに適さない油】
オリーブオイル、米油

また、亜麻仁油やエゴマ油が良いと紹介されることが増えてきましたが、これらの油にも欠点があります。 これらの油の違いは「炭素間の二重結合」と「油同士の重合反応」、「重合を無駄にしない酸化防止剤」の三点です。

他にも価格や手に入りやすさなどもありますので、基本的には「今、手元にある油の中からベターな油を使ってください」というスタンスです。 油選びを誤ってもスキレットが壊れることはないし、ダメだったらやり直せばいいだけです。 いくつか選択肢があるなら最適な油を選ぶ方法を理論的にお伝えしたいと思っています。

シーズニングの目的

まずは、シーズニングの目的を整理しましょう。 鉄鍋の類(スキレット、中華鍋、すき焼き鍋、鉄のフライパン、ステーキ皿など)は鉄製ですので酸素があればサビます。 水分が付着していれば、もっと簡単にサビてしまいます。

なら、何かで全体をコーティングしてみてはどうでしょう? 鉄製の本体が酸素や水を含む空気中でむき出しになっているからサビるのであれば、別の何かでコーティングして遮ればいいはずです。

その発想が「シーズニングの出発点」です。その素材は…

・簡単に手に入るもの
・コーティングに用いるので毒性のあるものはNG
(アレルギーを含む)

その条件で編み出した先人たちの知恵が「食用油を加熱して被膜を形成する」コーティング方法です。 油を加熱すると、油の分子同士が結合してポリマーという網目構造を形成します。 それが鉄の表面で固化して酸素や水分を遮断するのです。

しかも、酸素や水分だけでなく、食材の焦げ付きも抑えてくれるため、シーズニングは一石二鳥のお得情報として世に広まりました。

では、次にどのような油がシーズニングに適しているか、本題に入っていきましょう。

油選びの必要条件

シーズニングに適した油の条件は、先ほどあげた

1.「炭素間の二重結合」
2.「油同士の重合反応」
3.「重合を無駄にしない酸化防止剤」
がキーポイントになります。

炭素間の二重結合

食用油の大半は常温で液体ですが、加熱すると固化する(固まってカチカチになる)性質があるので、この性質を利用します。 鉄鍋の表面で固めてしまえば、洗ったり拭いたりしても簡単には落ちたりしません。

そこで、油の分子に含まれる炭素間の二重結合を利用します。油を加熱することで二重結合か切れ、生じた炭素の手(不対電子)が他の油の分子同士と結合することで固まります。 言い方を変えると、鎖状の油分子が互いに結合して、網目構造となることで固体の被膜を形成してくれるのです。 それが、鉄鍋の表面で固まることで水やヨゴレから鉄鍋の本体を守ってくれます。

ただし、どんな油でも良いわけではなく、二重結合の多い油や少ない油があります。 二重結合の少ない油では被膜を形成しにくいため、できれば二重結合の多い油を選びたいのです。 その指標として「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があります。

飽和脂肪酸は二重結合を持たず、不飽和脂肪酸は二重結合を持っています。 つまり、二重結合を多く含む不飽和脂肪酸が被膜の形成に役立つのです。

食用油に含まれている主な脂肪酸を挙げると…

飽和脂肪酸

  • C13H27COOH ミリスチン酸(二重結合0個)
  • C15H31COOH パルミチン酸(二重結合0個)
  • C17H35COOH ステアリン酸(二重結合0個)

不飽和脂肪酸

  • C15H29COOH パルミトレイン酸(二重結合1個)
  • C17H33COOH オレイン酸(二重結合1個)
  • C17H31COOH リノール酸(二重結合2個)
  • C17H29COOH リノレン酸(二重結合3個)

二重結合を含まない飽和脂肪酸よりも、二重結合を多く持つリノール酸やリノレン酸を含む油がシーズニングに適していると考えられます。 具体的に食用油の成分を見ていきましょう。

【蛇足となりますが】

私自身もシーズニングに適した油を求めてブログや動画で情報を集め続けています。 ただ、化学的に腑に落ちない情報が多々見受けられます。

その代表例が「洗剤で洗ってはいけない」というデマです。 ちゃんとシーズニングすれば固体の油になって鍋をがっちり包み込み、化学的な結合は中性洗剤で洗ったところで落ちることはありません。

洗剤で落ちてしまうようなシーズニング方法は、悪意のない思い込みによるデマ情報だと思います。 ここでお話している理論は難しいと感じるかもしれませんが、できるだけ分かりやすいように伝えていきますのでガマンしてお付き合いしてもらえたら幸いです。

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